21世紀に突入した頃は、映画制作においてデジタルカメラがフィルムカメラに追い付くことはない、デジタルがフィルムを凌駕することは無いだろうと考えられていました。無い”はずだ”と信じたかっただけかもしれません。
2025年の現在はどうでしょう、撮影も編集も映画館での上映も全てがすっかりデジタル化されてしまいました。
一方で、映画制作における決済や会計という側面から見るとどうでしょう。製作委員会方式が主流となっている日本映画界ではデジタル決済が立ち入る余地は未だ殆どないように思われます。
私がここで言うデジタル決済とは、中央銀行が発行するデジタル通貨CBDC(Central Bank Digital Currency)などではなく、ましてクレジットカードやデビットカード決済、前払い式のカード決済等などではありません。中央集権管理者のいないブロックチェーンを介した完全なるP2P取引、端的に言うとBitcoin決済のことです。
ビットコイン取引とは言わば「物々交換」です。受けたサービスや労働力に対して、ビットコインで「支払う」というより「対価としてお返しする」という感覚になります。
日本ではまだビットコインが「通貨」として認められていないので、取引所や交換所で現在の法定通貨に変換しない限り「お金」とは認知されません。
それでは映画制作におけるビットコイン決済を考えてみましょう。
昨今ようやく取り上げられる様になってきた映画制作現場の劣悪な労働環境(長時間重労働と低賃金)ですが、一向に改善される兆しが見えません。現場では深刻な人手不足の話も聞きますし、現役のスタッフが老後の不安を訴えている動画もしばしば目にします。
ビットコインに触れたことさえない人は取っ付きにくいと感じるかもしれませんが、技術には強いはずの映画スタッフ、特に若い世代のスタッフにとっては、一度ウォレットを作成し試してみれば、いとも簡単に導入することができるでしょう。
もしかしたら私が知らないだけで、若手映画スタッフの間では、既にかなりの割合で浸透しているのかもしれません。
製作側とスタッフ側のお互いがノンカストディアル(セルフカストディ)ウォレットを準備し管理することに同意できれば、殆どがフリーランスといわれる映画スタッフへの報酬もP2Pでビットコイン決済することが可能です。
しかし現段階で映画プロジェクト全体を全てビットコイン決済しようとすると齟齬が生じるでしょう。
殆どがエージェントに所属している俳優、役者達へのビットコイン決済は現時点では難しいでしょう。
しかし例えば、撮影監督や演出部と共に働くプリプロダクション分のみ、またはプリプロダクションとポストプロダクションにかかる費用のみ、もしくは合意を得られたスタッフのみにビットコイン決済を取り入れるとしたら。。。
ビットコインは発行上限が2100万BTCという「希少性」を持つことから、今後も世界中で「椅子取りゲーム」が止むことはなく、3、4年周期で倍々ゲームで価格が上昇して行く可能性が極めて高いでしょう − 例として2017年初頭には10万円前後だった1BTCですが、2024年の終わり近くには1100万円超え、2025年の5月終盤の現在は1500万円を超えています。
受け取ったビットコインを留保するのか、さっさと法定通貨に換金してしまうのかは個人の自由ですが、BTCを保有し続けることは長い目で見て(自分の将来への)有望な投資となることは間違いありません。
上記したような劣悪な労働環境(長時間重労働と低賃金)に喘いでいる現場スタッフがギャラの一部をビットコインで留保することにより、近い将来、人生の「ゲームチェンジャー」となり得る可能性を秘めているとさえ言えます。
ここに書いてあることは、今は絵に描いた餅に見えるかもしれませんが、誰かが描き始めなければ絵は完成しません。
2000年、ラース・フォン・トリアーが『ダンサー・イン・ザ・ダーク』で100台のMiniDVを駆使してあの驚異的なミュージカルシーンを実現したようにです。
冒頭に書いたように、21世紀に突入した頃は、現在の映画技術分野のデジタル化は誰も考えられなかったのです。
今、ブロックチェーン決済をIndiesの映画制作に持ち込むことができれば、近い将来、映画一本丸々の製作費がビットコイン決済される日が来るかもしれません。